元配偶者が養育費を払わない! 差し押さえ(強制執行)の方法と注意点
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離婚をして子どもと生活をしていくうえで、大きな不安は「お金」かもしれません。小田原市は、ひとり親家庭を支援するため、助成金などに関する情報をホームページ上で公開しているほか、問い合わせ窓口などをまとめた「ひとり親家庭のしおり」という冊子を、市役所で配布しているそうです。
離婚後の親子の生活を支えるうえで必要となるのが「養育費」です。ところが養育費をめぐっては、支払義務者がその約束を果たさず「支払いが滞っている」「連絡が取れない」などとトラブルが絶えない現状があります。元配偶者が支払いをしてくれない場合の解決策のひとつとして、資産の差し押さえ(強制執行)がありますが、どのような条件がそろえば実行をすることができるのでしょうか。
本コラムでは、差し押さえ(強制執行)の具体的な手順や利用の際の注意点について、ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスの弁護士が解説します。養育費の不払いで困っている方は、ぜひ参考にしてください。
1、養育費の差し押さえをするために必要なこと
養育費の差し押さえ(強制執行)は、残念ながらすべて養育費不払い・滞納で利用できるわけではありません。活用するためには適切な条件設定が必要です。そのため、離婚を考えている方は次のような点を頭に入れて条件を決めておくことが大切です。
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(1)離婚前に養育費の取り決めをしておく
離婚の際、養育費について取り決めをしていない世帯は少なくありません。
厚生労働省の調査によると、令和元年度に養育費相談支援センターへ相談したうちの実に58.1%が、離婚後に相談に訪れているそうです。
離婚時の状況によっては相手の顔を見たくないという方もいるでしょう。話し合おうとすると揉めてしまうため、離婚することを優先してしまった、ということもあるかもしれません。養育費は離婚後に取り決めることも可能ですが、相手と連絡が取れなくなったり、相手の財産が減っていたりと、離婚時から状況が変わることも少なくありません。そのため、離婚する前にしっかりと内容を決めておくことが大切です。
なお、DV(ドメスティックバイオレンス)やモラハラを受けており、当事者のみで話し合うのが困難な場合は、家庭裁判所の調停や弁護士のサポートを得ることを検討すると良いでしょう。 -
(2)取り決め内容は強制執行認諾文言付き公正証書にしておく
養育費について取り決めができたときは、確定した内容を必ず強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)の付いた公正証書にしておきます。
公正証書とは、公証役場で公証人により作成された文書のことです。口約束やメモ書き、個人的に作成した書類などとは異なり、内容の信用度が高いため裁判などでも有効な証拠とすることができます。
そして、強制執行認諾文言とは、取り決めに反して支払義務者が権利者である親に養育費を支払わなかった場合に、直ちに差し押さえ(強制執行)に移ることを認めさせる内容のことです。
たとえば「債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した」といった文言があると、この文言を根拠として支払義務者に対して強制執行できます。このような強制執行の根拠となる文書を「債権名義」といいます。
なお強制執行をするためには、文書の内容が現在執行できるものであることを示す「執行文」も必要です。執行文は、公証役場に申し立てれば付与してもらえます。 -
(3)話し合いでは解決ができない場合
養育費について話し合いで合意ができない場合は、調停や裁判で決めていきます。
家庭裁判所の調停で合意ができた場合には「調停調書」が作成され、不成立の場合は審判に移行し「審判書」が作成されます。いずれも裁判の判決と同じ効力を持ち、内容に反して養育費が支払われなかった場合は、それをもとに差し押さえ(強制執行)ができます。
養育費について取り決めたものの公正証書を作成していない場合は、後から作成するか、調停を利用して調停調書を作成するようにしましょう。
2、裁判所を通じて差し押さえをする流れ
差し押さえ(強制執行)は、裁判所を通じて行います。具体的な手順と必要書類は次のとおりです。
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(1)必要書類をそろえる
差し押さえをするためには、まず次の書類を準備しましょう。
いずれも裁判所のホームページからダウンロードできます。- 債権差押命令申立書
- 当事者目録
- 請求債権目録
- 差押債権目録
また以下の書類も必要です。
- 債権名義の正本(執行文付き)
- 送達証明書
- 資格証明書
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(2)裁判所に申し立てる
必要書類がそろったら、裁判所に申し立てをします。申立手数料は4000円です。また、手数料のほかに郵便用の切手も必要になります。
申立先は、相手の住所を管轄する裁判所です。自分の住所地ではない点は注意が必要です。 -
(3)債権差押命令の発令
書類に問題がなければ、裁判所が「債権差押命令」を出します。
債務者本人はもちろん、債務者の口座がある銀行、また給与も差し押さえる場合には相手の勤務先にも送られます。 -
(4)取り立ての実行
差押命令の送達から1週間が過ぎると相手や銀行、勤務先に取り立てをすることが認められます。ただし、一般的には差押命令を受け取った勤務先などから連絡あるでしょう。自分の口座に入金してもらうなどを相談しつつ、回収を進めましょう。
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(5)裁判所に取り立ての完了を報告する
支払いを受けることができた場合は裁判所に「取立届」を、全額の取り立てができた場合は「取立完了届」を提出します。
3、差し押さえができないケースと注意点
養育費の取り決めを公正証書にするなどしていても、次のようなケースでは差し押さえができません。たとえできたとしても、実際にはほとんど回収ができないこともあるため、注意が必要です。
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(1)相手が行方不明の場合
相手が行方不明の場合、差し押さえはできません。
養育費の支払いが滞り、元配偶者と連絡が途絶えた場合には、まずは所在を確認することから始めましょう。戸籍の附票を取り寄せる、弁護士の協力を得るなどして調べることになります。 -
(2)時効が過ぎた場合
養育費は通常、毎月定期的に支払われるもので「定期金債権」にあたります。
定期金債権の時効は、原則「5年」です。ただし、調停調書や確定判決に基づくもので、調停成立時や判決時に支払期限が過ぎているものについては10年です(民法第166条・同法第169条)。
期日が訪れた債権から、順次時効が完成していきます。時効を過ぎれば、原則として回収はできないため気をつける必要があります。 -
(3)差し押さえはタイミングが重要
一般的に養育費の差し押さえは、相手の預貯金と給料が対象です。ただし、それぞれ差し押さえの対象となる範囲が次のように異なります。
預貯金|差押命令が発令された時点の残高(差し押さえ後の入金は対象外)
給料|命令発令後に支払われる給料(命令前の給料は対象外)
預貯金の場合、命令時点で口座にある分が対象です。残高がほとんどない口座を差し押さえても意味がなく、費用倒れになるおそれがあります。そのため、たとえば給料日やボーナス支給後など、相手がまとまった金額を受け取る時期に命令を出してもらう必要があります。
また、給与については債務者の生活に必要な資金であるため、全額の差し押さえはできません。養育費の差し押さえ範囲は、原則として給料から社会保険料などを差し引いた額の1/2まで認められています。
なお、給与の差し押さえは、相手が会社を辞めるか養育費の支払いを終えるまで効力が続きます。つまり、一度分の養育費を差し押さえられるだけではなく、翌月以降の養育費も差し押さえた範囲内で回収することができるようになります。 -
(4)生命保険の解約返戻金の有無は事前に確認
差し押さえをするためには、対象となる財産を明らかにしなければいけません。そのため、相手の勤務先や口座のある金融機関を確認しておく必要があります。「どこかにお金をためているはず」では、差し押さえはできないのです。
しかし、養育費の支払いを拒んでいる相手に預金のありかなどを聞いても、教えてはもらえないでしょう。うそをつかれたり財産隠しをされたりする可能性も否定できません。
このようなケースに対応するため、令和2年4月1日に施行された改正民事執行法では、債務名義があれば裁判所から金融機関などに照会をかけて、預貯金の情報などを調べることができるようになりました。
ただし、生命保険の解約返戻金は情報提供の対象外です。
解約返戻金は契約内容によっては高額です。可能であれば離婚前に、生命保険契約の有無や契約会社などの情報を調べておくようにしましょう。
4、弁護士に依頼するべき理由
養育費の差し押さえは非常に手間がかかるうえに、法律の知識も必要です。申し立ての必要書類が多く、相手の勤務先や銀行とのやりとりなど回収作業にかかる負担も大きいでしょう。
また、相手の財産状況がわからない場合には、銀行口座の確認などをしなければならず、所在不明の場合は現住所を調べることから始めなければいけません。
養育費の不払いに悩んでいる場合や差し押さえを検討している場合には、泣き寝入りすることなく、まずは弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、ご状況をしっかりと伺ったうえで、どのような解決策があるのか適切なアドバイスをすることができます。また、差し押さえにかかる手続きや交渉なども、すべて任せることができるので、負担を大幅に減らすことができるでしょう。
5、まとめ
養育費の支払いは、親の義務です。しかし、養育費の不払いに悩む方は少なくありません。養育費を払わない元配偶者に対して、差し押さえをしたいとお考えであれば、ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスまでご相談ください。離婚問題の対応実績が豊富な弁護士が、養育費をしっかりと回収できるよう、徹底的にサポートします。
ご相談の受付は、電話、メールにて承っております。お気軽にお問い合わせください。
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