おとり捜査は違法? おとり捜査が適法となり処罰を受けうるケースとは

2024年02月26日
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おとり捜査は違法? おとり捜査が適法となり処罰を受けうるケースとは

近年、違法な私人逮捕がニュースで取り上げられることが増えています。

私人逮捕をするつもりでおとり捜査をすることは法律上認められていませんが、おとり捜査自体が直ちに違法となる訳ではなく、一定の条件のもと限定的に認められている行為です。

本コラムでは、具体的にどのようなケースが違法なおとり捜査となるのか、私人逮捕との違いはなにか、また、適法なおとり捜査により逮捕されそうな場合の対処法についてベリーベスト法律事務所 小田原オフィスの弁護士が解説します。

1、おとり捜査とは

通常の捜査による逮捕が困難な場合、警察がおとり捜査をするケースがあります。実は、おとり捜査の手法によっては、違法な捜査となる場合があります。そこで、おとり捜査の基礎知識をわかりやすく解説します。

  1. (1)おとり捜査の定義

    おとり捜査とは、捜査機関又はその依頼を受けた捜査協力者が、その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するように働き掛け、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するもの、と判例上されています。つまり、警察や警察の協力者が、警察関連の者であることを黙って、わざと犯罪行為をさせることをいいます

    たとえば、覚せい剤の売人に対して、警察官が覚せい剤の購入をしたいと連絡をとり、売人が覚せい剤を持ってきたところを逮捕したケースなどがおとり捜査にあたります。

  2. (2)おとり捜査の法的性質

    おとり捜査は、任意捜査なのか強制捜査なのか、現在も議論されています。判例上は、覚せい剤や大麻など薬物犯罪の場合で、通常の捜査方法だけでは犯罪の摘発が困難な場合には、任意捜査として許容されるとされています。ただし、対象者は犯罪の機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者など、限定的なケースに限られています。

  3. (3)私人逮捕とおとり捜査の関係は? 違法性について

    昨今、私人逮捕系YouTuberが逮捕されたことも記憶に新しいと思います。一般人によるおとり捜査は許されるのでしょうか?

    上述のようにおとり捜査は犯罪の機会があれば犯罪を行う意思がある者を対象にするなど、そもそも限定的な場合しか認められないものです。そのため、犯罪が行われていないのに、私人逮捕を目的として犯罪を誘発するようなおとり捜査はもちろん違法な行為です。むしろ、犯罪行為をそそのかして犯罪を行わせた場合には、その犯罪行為をさせた人が教唆犯として逮捕される可能性があります。

2、おとり捜査は違法なのか

おとり捜査が違法となるのは具体的にどういったケースなのでしょうか。おとり捜査が違法となる場合の理由と、違法の判断基準について解説します。

  1. (1)おとり捜査が違法になる理由

    おとり捜査が違法となる理由として、以下のような複数の可能性が挙げられます

    1. ① 捜査の公正、司法の廉潔性(れんけつせい)を害するから
    2. ② 国家が犯罪を作り出すことにより、刑事実体法によって保護されている法益を侵害・危殆(きたい)化するから
    3. ③ 捜査対象者の人格的権利・利益を侵害するから
    など
  2. (2)おとり捜査が違法かの判断基準

    どのようなおとり捜査が違法となるかは、裁判などでも争われており、一貫した基準が今もなおありません。一般的に犯意を誘発するようなおとり捜査は、違法なケースが多いとされています。

    たとえば、お金に困っている人に対して、強盗や詐欺など闇バイトで稼げることを伝え、強盗や詐欺をさせた場合には違法な捜査となる可能性が高いです。なぜなら、本来犯罪をする気がない人に対して犯罪行為をする決意をさせ、実際に犯罪をさせた場合には、捜査機関が犯罪を作り出したと考えられるからです。

    一方で、犯罪の機会を提供しただけの場合には、違法なおとり捜査にあたらない可能性があります。たとえば、実際に路上で薬物を売っている売人に近づき、薬物を売ってほしいとの申告をしたところ、売人が薬物を手渡してきた場合には、犯罪の機会を提供したにとどまると判断される可能性があります。そうすると、違法なおとり捜査にはあたらない可能性が高いです。

3、おとり捜査が許容されるケース

では、適法なおとり捜査で逮捕され、有罪になるケースをみていきましょう。

  1. (1)適法なおとり捜査のケース

    一般的に、おとり捜査が許容されるのは、薬物犯罪などの被害者がいない犯罪です。被害者がいない犯罪は、被害届などの提出や犯罪被害の通報がなく、犯罪があったことを見つけるのはとても難しいです。そのため、覚せい剤や大麻の売買や所持を検挙するため、おとり捜査が行われることがあります。このように犯罪被害者がいないケースでは、おとり捜査でなければ、犯罪の検挙が難しいとして許容される場合があります。実際に過去の裁判例でも薬物事犯によるおとり捜査が許容され、適法とされた事例があります。

  2. (2)適法なおとり捜査だった場合|逮捕後の流れ

    おとり捜査が適法であった場合、今後逮捕される可能性があると考えられます。そして、逮捕されれば、警察署で取り調べを受けて、少なくとも10日前後は家に帰ることができません。この期間で釈放されれば、良いですが起訴されることになれば、このまま家に帰ることなく、裁判をすることになります。裁判で、警察官のおとり捜査について違法性を争うこともできます。ただし、争ったとしてもその間は拘置所などで暮らすことになってしまいます。

    もし、おとり捜査の適法性を争うことになれば、裁判が長引く可能性がとても高くなります。そして、裁判でもおとり捜査が適法であったとなれば、犯罪が成立し、処罰されることになります。犯罪内容や初犯かどうかによっても異なりますが、有罪判決をうけて執行猶予がつかなければ、そのまま刑務所へ行くことになります。また、執行猶予つきの判決だったとしても、前科はついてしまいます。

4、違法なおとり捜査により逮捕されそうなときすべきこと

では、違法なおとり捜査により逮捕されそうなときにどのようなことをすべきなのでしょうか。おとり捜査であったとしても犯罪をした事実を変えることはできません。しかし、状況によっては、警察がその犯罪を作り出したと評価できる場合も存在します。そこで、違法なおとり捜査により逮捕されそうなときにすべきことを紹介します。

  1. (1)弁護士に相談する

    まず、おとり捜査で逮捕されそうなことを弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、状況を聞き、今後どのようなことが起こるのか、説明することができます。そして、逮捕されるような状況であるのなら、どうすればいいのかアドバイスできます。ただし、弁護士に相談する際には、必ず隠し事をせず、正直に話すことが肝心です。なぜなら、うそをついたり、自分に有利なように隠し事をしてしまうと、弁護士は正確に状況を知ることができず、適切なアドバイスをすることができないからです。仮に逮捕され、起訴されて裁判になることになれば、お互いの信頼関係が重要になります。今後の弁護活動にも影響が出てしまうおそれがあるため、弁護士に相談を考えている場合には、言いづらいことかもしれませんが、正直に話すようにしましょう。

  2. (2)自首する

    おとり捜査で罪を犯してしまい、逃げてしまった場合には自首することも選択肢のひとつになります。犯罪捜査されている以上、いつかは逮捕されてしまう可能性が高いです。そのような状況なら、いつ来るかわからない逮捕におびえて暮らすよりも自首をするほうが良いケースもあるでしょう。一般的には、自首をすると罪が軽くなったり、起訴されないで済むと思っている方もいるかもしれません。しかし、実際には自首したからといって、罪が軽くなったり、起訴されないとは限りません。あくまで、自首は、検察官や裁判官が執行猶予や刑期、罰金額を決める考慮要素にすぎないのです。もし自首を考えているのであれば、自首する前に弁護士に相談することで、そもそも自首すべきなのかどうかや、今後どうなってしまう可能性があるのかを詳しく聞くことができます。弁護を依頼することで、今後自分にとってなるべく不利益を被らないようにさまざまな対応をしてくれることも期待できます。

5、まとめ

捜査機関がおとり捜査で証拠をつかもうとしている場合には、すでに嫌疑が濃厚で逮捕の決め手を探しているだけという場合もがあります。
もし、おとり捜査かもしれないと不安に思っているのであれば、弁護士に相談しましょう

ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスでは、刑事事件の経験豊富な弁護士が、あなたの事情を丁寧に伺い、今後の対応についてアドバイスやサポートをさせていただきます。逮捕されるかもしれないと不安な方は、一度当事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています