禁止区域では営業できない? 店舗の営業が風営法違反になる場合を解説
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風俗店の営業などには、風営法および各都道府県の条例に基づいて、禁止区域が設けられています。
禁止区域には、風俗営業などの店舗を出店することができません。もし風営法に違反して禁止区域に出店した場合には、刑事罰の対象となる可能性もあります。
本コラムでは、風俗営業などに適用される禁止区域について、対象となる営業の種類や確認方法、違反時の罰則などを、ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスの弁護士が解説します。
1、風俗営業などの禁止区域とは
風営法(正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)と各都道府県の条例では、風俗営業などを行うことができない禁止区域が定められています。
風俗営業などの禁止区域が定められていることの目的は、その区域における清浄な風俗環境を保持すること、および少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することです。
風営法で規制されている営業は、飲酒を通じた交流や接待、賭博的な要素の問題点が指摘されているマージャンやパチンコ、性的なサービスなどに関連しています。
もし住宅街や学校の近くなどにこれらの営業を行う店舗が乱立すると、治安の悪化や、青少年への悪影響などに関する懸念が生じてしまいます。
そのために、風営法および各都道府県の条例では、風俗営業などの禁止区域を定めて、対象となる営業が可能な地域を限定しているのです。
2、禁止区域が設定されている営業の種類
以下では、風営法および各都道府県の条例によって禁止区域が設定されている営業について、具体的に解説します。
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(1)風俗営業
風俗営業とは、以下のいずれかに該当する営業をいいます(風営法第2条第1項)。
- (a)キャバレー、待合、料理店、カフェその他設備を設けて、客の接待をして客に遊興または飲食をさせる営業
- (b)喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの((a)に当たるものを除く)
- (c)喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつその広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの
- (d)マージャン屋、パチンコ屋その他設備を設けて、客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
- (e)スロットマシン、テレビゲーム機、フリッパーゲーム機、ルーレット遊技やトランプ遊技の設備などを備える店舗、その他これに類する区画された施設(ホテル等・大規模小売店舗・遊園地内の区画された施設を除く)において、当該遊技設備により客に遊技をさせる営業((d)に当たるものを除く)
風俗営業を営もうとする者は、その種別に応じて、営業所ごとに所在地の都道府県公安委員会の許可を受ける必要があります(風営法第3条第1項)。
また、公安委員会は、営業所が良好な風俗環境を保全する観点から都道府県の条例で定める地域(=禁止区域)内にある場合は、風俗営業の許可をしてはならないものと定めています(風営法第4条第2項第2号)。
したがって、禁止区域内において風俗営業を営むことはできないのです。 -
(2)性風俗関連特殊営業
性風俗関連特殊営業とは、いわゆる「性風俗店」の営業です。
具体的には、風営法により、以下の5種類の性風俗関連特殊営業が定められています。- (a)店舗型性風俗特殊営業
(例)ソープランド、店舗型ヘルス、ストリップ劇場 - (b)無店舗型性風俗特殊営業
(例)デリバリーヘルス - (c)映像送信型性風俗特殊営業
(例)アダルト動画の配信 - (d)店舗型電話異性紹介営業
(例)店舗型テレクラ - (e)無店舗型電話異性紹介営業
(例)無店舗型テレクラ
性風俗関連特殊営業(映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型電話異性紹介営業を除く)については、善良の風俗や正常な風俗環境を害する行為、または少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する観点から、都道府県の条例で定める敷地の周囲200メートル以内の区域(=禁止区域)における営業が禁止されています(風営法第28条第1項等)。
さらに、各都道府県は、条例によって地域を定めて性風俗関連特殊営業を営むことを禁止することができます(風営法第28条第2項等)。
ただし、禁止区域であっても、風営法が施行・適用される前から営業していた性風俗特殊営業の店舗については、例外的に営業が認められています(風営法第28条第3項等)。
そのため、古くからある性風俗店については、禁止区域内でも営業している場合があるのです。 - (a)店舗型性風俗特殊営業
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(3)特定遊興飲食店営業
特定遊興飲食店営業とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ客に酒類を提供して飲食をさせる営業で、午前0時以降午前6時までの深夜帯にも営業するものをいいます(風俗営業に当たるものを除く)(風営法第2条第11項)。
特定遊興飲食店営業を営もうとする者は、営業所ごとに所在地の公安委員会の許可を受けなければなりません(風営法第31条の22)。
また、公安委員会は、営業所が良好な風俗環境を保全する観点から都道府県の条例で定める地域(=禁止区域)内にある場合は、特定遊興飲食店営業の許可をしてはならないものとしています(風営法第31条の23、第4条第2項第2号)。
そのため、禁止区域内において特定遊興飲食店営業を営むことはできません。
3、風俗営業などの禁止区域を確認する方法
以下では、風俗営業の禁止区域を確認するための手順を解説します。
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(1)各都道府県の条例を確認する
風俗営業の具体的な禁止区域は、各都道府県の条例によって定められています。
そのため、まずは各都道府県の条例を確認してください。
風俗営業と特定遊興飲食店営業については、条例で定められた区域が禁止区域となります。
これに対して、性風俗関連特殊営業(映像送信型性風俗特殊営業・無店舗型電話異性紹介営業を除く)については、条例で定められた敷地の周囲200メートル以内の区域が禁止区域となります。
さらに、特定の地域が条例によって禁止区域に指定されている場合もあるため、見落とさずにチェックすることが大切です。 -
(2)出店候補地の用途地域を確認する
風俗営業と特定遊興飲食店営業の禁止区域は、用途地域を基準に定められている場合が多いといえます。
「用途地域」とは、都市計画法に基づき用途に応じて指定された地域で、具体的には以下の13種類です。- ① 第一種低層住居専用地域
- ② 第二種低層住居専用地域
- ③ 第一種中高層住居専用地域
- ④ 第二種中高層住居専用地域
- ⑤ 第一種住居地域
- ⑥ 第二種住居地域
- ⑦ 準住居地域
- ⑧ 田園住居地域
- ⑨ 近隣商業地域
- ⑩ 商業地域
- ⑪ 準工業地域
- ⑫ 工業地域
- ⑬ 工業専用地域
多くの都道府県では、上記のうち①~⑧の用途地域が、風俗営業と特定遊興飲食店営業の禁止区域とされています。
したがって、これらの住居系用途地域においては、原則として風俗営業や特定遊興飲食店営業の店舗を出店することはできません。
用途地域は、インターネット上で市区町村名や都市計画図などを用いて検索できるほか、各自治体の窓口で閲覧できる場合があります。
風俗営業や特定遊興飲食店営業の出店場所を検討する際には、必ず、用途地域もチェックしましょう。 -
(3)保全対象施設からの距離を確認する
学校・図書館・児童福祉施設・病院・診療所などは、風俗営業などから有害な影響を受けないようにするため、条例によって保全対象施設に指定されている場合が多々あります。
これらの保全対象施設から一定の距離内にある区域においては、風俗営業などの店舗を出店することができません。
風俗営業などの出店場所を検討する際には、地図上で周囲に保全対象施設がないことを確認しましょう。
4、禁止区域で風俗営業などを行った場合の罰則
許可制とされている風俗営業と特定遊興飲食店営業については、禁止区域における営業はそもそも許可が下りません。
無許可で風俗営業または特定遊興飲食店営業を行った者は「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(風営法第49条第1号、第7号)。
性風俗関連特殊営業は届出制ですが、禁止区域における営業は禁止されています。
禁止区域において性風俗関連特殊営業を行った者も「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(風営法第49条第5号、第6号)。
5、まとめ
風営法および各都道府県の条例に基づく禁止区域では、風俗営業などを営むことができません。
禁止区域で風俗営業などを営んだ場合には刑事罰の対象になるため、注意しましょう。
飲食店や風俗店など経営者で、風営法の規制を順守して営業したいと望まれる方は、法律の専門家である弁護士に検討することも相談してください。
ベリーベスト法律事務所では、風営法に関するご相談を随時受け付けております。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています