フォークリフトの事故! ヘルメットがない会社に問える法律上の責任
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2022年に神奈川県内で発生した労働災害によって亡くなった方は30名でした。フォークリフトのような重機を運転している方は、ケガや重大な事故に巻き込まれるリスクがあるため、行政通達によって頭部保護用のヘルメットを着用することが求められています。
しかし会社がヘルメットの準備を怠った場合、事故によってケガをした労働者は、会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。弁護士のサポートを受けて、適正額の損害賠償を請求しましょう。
本コラムでは、フォークリフトの操縦時におけるヘルメットの着用について、法律上の取り扱いや会社の責任などをベリーベスト法律事務所 小田原オフィスの弁護士が解説します。
1、フォークリフトの操縦時に起こり得る事故
工事現場においてフォークリフトを操縦している際には、以下のような事故が発生するリスクがあります。
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(1)フォークリフトに挟まれる・巻き込まれる
フォークリフトを旋回した際に車体が傾いたり、柱や壁などに衝突した時に操縦者が車外へ投げ出され、倒れてきたフォークリフトに挟まれてしまう事故が起こることがあります。
また、操縦者が車外の死角にいる他の人に気づかず、旋回時にフォークリフトの後部と壁や荷物の間にその人を挟んだり、車体に巻き込んでしまったりするケースがあります。 -
(2)壁や人などに激突する
操縦者がフォークリフトの操縦に不慣れである場合、ハンドル操作のミスやブレーキの遅れが原因でフォークリフトを制御できなくなり、壁や他の人に激突してしまうケースがあります。
壁に激突した場合は、衝撃によって操縦者がケガをしてしまうことが多いです。
他の人に激突した場合は、激突された人が重傷を負い、または死亡してしまうことがあります。特に高速度で激突した場合は、重傷や死亡のリスクが高いので要注意です。 -
(3)墜落・転落する
段差の上や高所におけるフォークリフトの操縦中に、操縦を誤ってフォークリフトごと墜落・転落してしまうケースがあります。
特にトラックヤードのように、縁にガードや車輪止めが付いていない場所での作業では、ブレーキの遅れや旋回時の脱輪などが原因で、フォークリフトごと落ちてしまうことがあるので注意が必要です。
また、フォークリフトの荷台から操縦者が墜落・転落してしまうケースもあります。
2、フォークリフトの操縦時には、ヘルメット(保護帽)を着用すべき
フォークリフトを含む荷役運搬機械を操縦する際には、行政通達によってヘルメット(保護帽)を着用することが求められています。会社としては、フォークリフトを用いた作業に従事する労働者の安全を確保すべく、ヘルメットを着用させるための対応を行わなければなりません。
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(1)行政通達によってヘルメットの着用が求められている
行政通達(昭和50年4月10日基発第218号)では、フォークリフトを含む荷役運搬機械の使用に当たって安全作業を確保するための措置を講じることを事業者に求めています。
安全作業の確保措置のひとつとして挙げられているのが「保護具の着用」です。フォークリフトを含む荷役運搬機械の関係労働者には、ヘルメット(保護帽)、安全靴等の保護具を着用させることが求められています。
行政通達そのものに強制力はありませんが、労働基準監督署による監督指導は行政通達を踏まえて行われるため、行政通達の内容を無視することはできません。
フォークリフトなどを用いた荷役作業に従事する労働者については、事実上作業用ヘルメットを着用させる義務があると言ってよいでしょう。
なお、上方において他の労働者が作業を行っているところで作業をする労働者については、保護帽の着用義務が使用者・労働者の双方に課されています(労働安全衛生規則第539条)。
後述するように、もし事業者が労働者にヘルメットを着用させることを怠れば、フォークリフト事故に巻き込まれた労働者やその遺族に対し、安全配慮義務違反による損害賠償責任を負う可能性があります。
さらに、労働安全衛生法および労働安全衛生規則に基づく行政処分等の対象になることもあります。 -
(2)ヘルメットの着用について会社がとるべき対応
フォークリフト作業に従事する労働者のヘルメット着用について、会社は主に以下の対応をとるべきです。
① ヘルメットの準備
労働者が被るためのヘルメットは作業必需品であるため、会社側で準備しておくべきです。
② ヘルメット着用の重要性に関する周知・教育
フォークリフト作業に従事する労働者に対して、事故から命を守るためにはヘルメットの着用が重要であることを周知する必要があります。定期的に安全に関する研修を行うことが望ましいでしょう。
③ ヘルメット未着用者の危険箇所への立ち入り禁止
ヘルメットを着用していない者は、フォークリフトによる作業現場へ立ち入らせないようにすべきです。
3、ヘルメット(保護帽)を着用させなかった会社が負う法的責任
フォークリフト作業をする労働者のためにヘルメットを準備しない、ヘルメット着用についての周知・教育を行わない、ヘルメット未着用者を危険箇所に立ち入らせるなど、ヘルメットに関する安全対策を怠った場合には、会社は安全配慮義務違反の責任を負うことがあります。
「安全配慮義務」とは、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるように、必要な配慮をする使用者の義務です(労働契約法第5条)。
フォークリフト作業に従事する労働者にヘルメットを着用させることは、事故発生時に労働者の生命や身体を守るために必要な対応であって、安全配慮義務の一環であると考えられます。
また、前記の行政通達によって、会社はヘルメットの着用義務の存在を認識することが可能だったといえます。
したがって、労働者にヘルメットを着用させることを怠った結果、その労働者がフォークリフト事故に巻き込まれて死亡し、または重傷を負った場合には、会社は安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負う可能性が高いです。
特に労働者が死亡し、または重篤な後遺症をもたらした場合には、会社に対して多額の損害賠償を請求できることがあります。
4、労災被害者・遺族が弁護士に相談すべき理由
フォークリフト事故に巻き込まれるなど、労働災害によってケガをし、または死亡した被災労働者やその遺族は、以下の理由から弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)労災保険給付は損害全額を補填するものではない
労働者が業務中に業務に関連してケガをした場合は、労働基準監督署への申請等によって労災保険給付を受給できます。労災保険給付は治療費や逸失利益などをカバーするため、被災労働者の生活保障に役立つでしょう。
ただし労災保険給付は、労働者が負った損害全額を補填するものではありません。画一的な基準で支給されるため、慰謝料は労災保険給付の対象外とされているなど、個々の事案における損害額が十分反映されない場合があります。
労災保険給付によってカバーされない損害については、安全配慮義務違反や使用者責任(民法第715条第1項)に基づき、会社に対して賠償を請求していくことになります。これらにより、会社の責任が認められれば、慰謝料を含めた損害全額の賠償を受けられます。 -
(2)会社に対する損害賠償請求は弁護士に依頼するのが安心
会社に対する損害賠償請求は協議・労働審判・訴訟などを通じて行いますが、各手続きの特徴を踏まえて適切に対応する必要があります。また、損害賠償請求を行うに当たっては、会社に責任があることを法的根拠に基づいて主張することが大切です。
そのため、労災の損害賠償請求は、法律を熟知した弁護士に依頼するのが安心です。
弁護士は、労災に関する状況を踏まえた上で、会社の責任を立証するために説得力のある主張を検討します。会社の責任を基礎づける事実に関する証拠の収集も、弁護士がサポートいたします。
さらに、協議・労働審判・訴訟による実際の損害賠償請求についても、弁護士が対応を全面的にサポートいたします。被災労働者やご家族にとって、会社との交渉や裁判手続きへの対応にかかる労力や精神的負担が軽減される点も、弁護士に依頼することの大きなメリットです。
ご自身やご家族がフォークリフト事故などの労災に遭い、会社に対して損害賠償を請求したい方は、弁護士にご相談することをお勧めします。
5、まとめ
フォークリフト作業に従事する労働者を保護するため、会社はフォークリフト自体の安全性を確保するとともに、操縦者や近くにいる人にヘルメットを着用させることが求められます。
会社がこれらの安全対策を怠った結果、フォークリフト事故に巻き込まれてケガをした被災労働者は、会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。弁護士のサポートを受けながら、適正額の損害賠償を請求しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、工事現場における事故を含めて、労災に関するご相談を随時受け付けております。被災労働者が十分な損害賠償を受けられるように、会社に対する責任追及をサポートします。
ご自身やご家族がフォークリフト事故に巻き込まれてしまい、会社に対して損害賠償請求等をお考えの方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています