税金を支払えずに滞納するとどうなる? 支払えないときの対処法
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神奈川県では、令和4年度から市町村において対応に苦慮している税金の滞納者からの回収をサポートする「実地支援制度」をスタートしました。本制度は、県税務指導課や県税事務所の職員が財産調査や差し押さえなどの方法の指導、助言をすることによって、市町村の税金徴収能力の向上を図ることを目的としています。
複数の金融機関や貸金業者から借金をしている方は、借金の返済だけで余裕がなくなり、税金の支払いに充てるお金もない、という状況になられている方もおられるでしょう。
税金の支払いは、国民の義務とされています。そのため、定められた期限までに支払いがなされなかった場合には、さまざまなペナルティーが課されることになるのです。
本コラムでは、税金を滞納した場合のペナルティーや税金を支払えないときの対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスの弁護士が解説します。
1、税金を滞納するとどうなる?
税金を滞納した場合には、以下のような流れで手続きが進み、最終的に財産が差し押さえられてしまうことになります。
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(1)延滞金の発生
税金には納期限が定められているため、納期限を経過しても税金の支払いがない場合には、本来の税金に加えて延滞金が加算されることになります。
所得税、相続税、贈与税などの国税について延滞が生じた場合には、納期限から2カ月を経過すると延滞金の利率が高くなってしまいます。
また、固定資産税、住民税、自動車税、個人事業税などの地方税については、納期限から1カ月を経過した時点で延滞金の利率が高くなってしまうのです。
そのため、税金を滞納した場合には、延滞金の負担を抑えるためにも、できる限り早めに支払いを行うことが大切です。 -
(2)督促状の送付
税金の滞納を続けていると、国税については原則として納期限から50日以内に、地方税については原則として納期限から20日以内に、納税者のもとに督促状が送られてきます。
督促状を受け取っても税金の支払いをしない場合には、差し押さえを予告する催告書が届くこともあります。
また、市区町村によっては、電話での支払い催促や担当職員が自宅までやってくるということもあるのです。 -
(3)滞納処分の執行
督促状を発送した日から10日以内に対応している税金の支払いがない場合には、法律上は、税金滞納者の財産を差し押さえることができる状態となります。
どのタイミングで財産の差し押さえがなされるかは、市区町村の担当者の判断によりますので一概にはいえませんが、少なくとも督促状を発送した日から10日を経過した後は、いつ差し押さえをされてもおかしくない状態といえます。
差し押さえの対象となる主な財産としては、不動産、預貯金、生命保険、給料などがあります。たとえば、不動産が差し押さえられた場合には、強制的に競売手続きが行われて、不動産を失ってしまうというリスクがあります。
給料が差し押さえられた場合には、職場に通知されるため、税金を滞納していることを職場に知られてしまうというリスクもあるのです。
2、税金が払えないときの対処法
税金が払えないという場合には、以下のような方法を検討しましょう。
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(1)税務署・市区町村に相談する
税金の滞納をして督促状が届いた場合には、財産を差し押さえられてしまうというリスクが生じます。そのまま放置をしていても問題は解決しませんので、まずは、税務署や市区町村に相談をすることが大切です。
「税金の滞納をしている」という負い目があると、つい相談に行くのをためらってしまうかもしれません。
しかし、何も対応をしないと支払い意思がないものとみなされて、早い段階で滞納処分が執行される可能性もあるのです。
そのため、早めに税務署や市区町村に相談に行くのはもちろんのこと、相談する際には、現在の経済状況を具体的に説明しつつ、税金を支払う意思があることを示すことが重要です。 -
(2)分割納付を利用する
税金の支払いは一括払いが原則となりますが、支払いが困難な事情がある場合には、分割納付の相談にも応じてくれます。分割納付が認められた場合には、分割納付に対応している期間は、財産を差し押さえられるというリスクは低くなります。
「一括での納付は難しいが、分割納付であれば滞納している税金を支払うことは可能だ」という方は、分割納付の利用を検討してみましょう。 -
(3)猶予制度を利用する
分割納付をすることも困難な程度に経済的に困窮している場合には、納付の猶予制度を利用することによって、一定期間滞納している税金の納付を猶予してもらうことが可能です。
猶予制度には、「徴収の猶予制度」と「換価の猶予制度」があります。
徴収の猶予制度とは、特定の事情がある場合に、1年以内で納付ができるように計画を作成することで、徴収の猶予を認めてもらう制度です。
徴収猶予が認められた期間については、延滞金の全部又は一部が免除されます。
徴収猶予が認められる事情としては、以下のようなものがあります。- 災害や盗難
- 納税者又は家族の病気、負傷
- 事業の廃止・休止
- 事業についての著しい損失
- 本来の期限から1年以上経過後に、修正申告などによって納付税額が確定した場合
換価の猶予とは、「一括で税金を納付すると生活の維持が困難になってしまう」という事情がある場合に、1年以内の期間に限って、財産の差し押さえや処分が猶予されるという制度です。
3、税金以外の借金があるなら債務整理を検討しよう
税金以外にも借金がある場合には、債務整理を検討するようにしましょう。
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(1)債務整理で税金以外の借金の負担を減らすことができる
滞納している税金以外にも借金があるという場合には、借金の返済によって税金を支払う経済的な余裕がないという場合もあります。
税金については、債務整理の対象にはなりません。
しかし、税金以外の借金を債務整理することによって、経済的に余裕ができ、滞納している税金の支払いが可能になる場合があるでしょう。 -
(2)債務整理の方法
債務整理の方法は、以下の3種類となります。
- ① 任意整理
「任意整理」とは、債権者との交渉によって将来利息のカットや返済回数・期間を見直すことによって、借金返済の負担を軽減する手続きです。
払い過ぎた利息がある場合には過払金請求をすることになりますが、この過払金請求も、任意整理の手段のひとつです。
任意整理では、自己破産や個人再生のように借金総額の大幅な減免は難しいですが、裁判所を介しない手続きであるため、特定の債権者のみ債務整理の対象にするなどの柔軟な対応が可能となります。
たとえば、自動車ローンの債権者を債務整理の対象から外すことで、自動車ローンの残っている自動車が引き上げられてしまう事態を回避することもできます。 - ② 自己破産
「自己破産」とは、裁判所に破産申し立てを行い、免責決定を受けることによって、借金の負担をゼロにすることができる手続きです。
免責決定を受けることができれば、借金を返済する必要はなくなるため、他の債務整理に比べて最も大きな効果が得られます。
ただし、自己破産をする際には、一定以上の資産を有している場合には、すべて換価して債権者への配当にまわさなければなりません。 - ③ 個人再生
個人再生とは、裁判所に個人再生の申し立てを行い、再生計画の認可を受けることによって、借金額を大幅に減額することができ、減額後の借金を原則3年(最大5年)の期間で分割払いをしていくという手続きです。
個人再生の大きな特徴としては、住宅ローンがある場合でも自宅を維持したまま、住宅ローンを除く借金の減額を受けることができるという点です。
住宅ローン以外の借金で住宅ローンの返済が困難な状態になっているという方には、最適な手続きといえるでしょう。
- ① 任意整理
4、税金を滞納したまま時効を迎えるのは難しい
税金を滞納したまま時効を迎えることは難しいため、早めに弁護士に相談をして、債務整理などの対応を検討するようにしましょう。
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(1)税金にも時効がある
所得税、相続税などの国税については、原則として法定の納期限から5年間(贈与税は原則6年間)行使しないことによって、時効により消滅します。
また、固定資産税、住民税、個人事業税などの地方税についても、同様に原則として法定の納期限の翌日から5年間行使しないことによって、時効により消滅するのです。
このように、税金も借金と同様に一定の期間の経過によって時効により消滅することがあります。 -
(2)税金の時効成立は非常に難しい
理論上は、税金の支払いを長期間滞納していれば、時効によって消滅するということはあり得ます。
しかし、実際には、時効成立前に税務署や市区町村が督促や差し押さえなどの手続きを行いますので、それによって時効はストップしてしまいます。
滞納している税金の時効が成立するまで、税務署や市区町村が放置するということは、現実的にはほぼあり得ません。
そのため、税金の時効成立を待つというのは得策ではないでしょう。
税金の支払いが難しいという場合には、時効成立を待って放置するのではなく、税務署や市区町村に相談をして、分割でもよいので少しずつ支払っていくということが大切です。
また、税金以外に借金があるという場合には、借金の整理をすることによって税金の支払いが可能になることもあります。
そのため、借金の返済で税金を支払う経済的な余裕がないという方は、早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
税金を滞納していると、延滞金が加算されるだけでなく、不動産、預貯金、給料などの資産を差し押さえられて、強制的に滞納している税金の支払いに充てられることになります。
このような滞納処分が執行されてしまうと、本人にとっても不利益が大きくなるため、税金の支払いが難しい状態になった場合には早めに相談をすることが大切です。
税金の滞納や借金の返済でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスまでお気軽にご相談ください。
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