借金の遅延損害金は免除される? 支払いを滞納した場合の対処法

2023年06月13日
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借金の遅延損害金は免除される? 支払いを滞納した場合の対処法

令和2年度に小田原市に寄せられた市民相談の総数は1578件で、そのうち債権債務に関する相談は94件でした。

借金の返済を滞納すると、滞納状態を解消するまで、遅延損害金(延滞金)が発生し続けます。債務者には、元本や利息と同様、遅延損害金についても支払う義務があります。返済を怠ると、訴訟・強制執行によって財産を失うおそれもあるのです。

もし支払いが難しい場合には、弁護士に依頼したうえで、債務整理を行いましょう。本コラムでは、「遅延損害金」について、利息との違いや利率・計算方法、支払わないことによるリスク、免除してもらう方法などを、ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスの弁護士が解説します。

1、遅延損害金とは?

「遅延損害金」とは、債務を期限どおりに支払わなかった債務者が、債権者に対して支払うべき損害賠償です。

  1. (1)遅延損害金と利息の違い

    遅延損害金は、債務の元本に一定の利率をかけて計算する点で「利息」と似ています。
    しかし、利息と遅延損害金は、法的な位置づけが全く異なるものです

    利息は、借りたものの使用することの対価として、契約に基づく借入期間などについて発生します。
    たとえば、借入日が2022年4月1日、返済期日が2023年3月31日の場合、利息が発生するのは2022年4月1日から2023年3月31日までの期間となります。
    これに対して、遅延損害金は、金銭債務の弁済(支払)が遅れたことへのペナルティとして、契約に基づく期限の経過後に発生します。
    たとえば、借入日が2022年4月1日、返済期日が2023年3月31日の場合、遅延損害金が発生するのは2023年4月1日以降の期間となるのです。

    上記のように、利息と遅延損害金では発生期間が異なります。
    また、遅延損害金にはペナルティの側面があるため、利息よりも高い利率が設定されるのが一般的です

  2. (2)遅延損害金の利率・計算方法

    遅延損害金の利率は、以下の要領によって決まります(民法第419条第1項)。

    ① 契約の定めがない場合:法定利率(年3%※)
    ※2020年3月31日以前から支払いが遅れていた場合については、法定利率は年5%

    ② 契約の定めがある場合
    (a)約定利率が法定利率を超える場合:約定利率
    (b)約定利率が法定利率以下の場合:法定利率


    遅延損害金の金額は、以下の計算式によって求められます。

    遅延損害金=元本額×適用利率×滞納日数/365日

    (例)
    遅延損害金の約定利率が年14.6%で、200万円の元本の返済を60日間滞納した場合

    遅延損害金
    =200万円×14.6%×60/365
    =4万8000円

2、返済が遅れることによるリスク

返済がない場合、リスクを負うことになる点に注意してください。

  • 信用情報に傷がつく(ブラックリスト)
  • 一括返済の請求を受ける
  • 訴訟を提起される
  • 強制執行により財産を失う


  1. (1)信用情報に傷がつく(ブラックリスト)

    銀行・貸金業者・カード会社などに対する債務(遅延損害金を含む)を支払わないと、個人信用情報機関に「事故情報」が登録されます。
    これを俗に「ブラックリスト入り」と呼びます。

    個人信用情報機関に事故情報が登録されると、銀行・貸金業者・カード会社などの与信審査を通過できなくなってしまいます。
    債務不履行による事故情報の登録期間は5年間であり、その間は新たな借り入れやクレジットカードの利用などができなくなるのです

  2. (2)一括返済の請求を受ける

    銀行・貸金業者・カード会社からの借入では、借金の返済を一定期間(回数)滞納した場合には、債務者は期限の利益を失うと定められているのが一般的です。

    債務者が期限の利益を失った場合、債権者は、債務者に対し、残っている債務の一括返済を請求可能できます

  3. (3)訴訟を提起される

    銀行・貸金業者・カード会社などの債権者は、不払いとなっている債権を回収するため、債務者に対して訴訟を提起してくる可能性があります(債権回収会社に対して債権譲渡が行われ、債権回収会社が訴訟の相手方となるケースもあります)。

    訴訟は専門的な手続きであるため、債務者として適切に対応するのは非常に大変です。
    しかし、裁判所からの連絡を無視して、訴訟活動をしておかないと、債権者の主張がそのまま認められた判決が下されてしまいます
    そのため、弁護士費用はかかってしまいますが、訴訟は弁護士に依頼することが一般的です。

  4. (4)強制執行により財産を失う

    訴訟で債権者の請求を認めた判決が確定すると、債権者は裁判所に強制執行を申し立てることができます。
    強制執行は、債務者の財産を強制的に没収し、債務の弁済に充てる手続きです。

    預貯金や給与の一部などが差し押さえられると、経済的に大きなダメージを受けて、生活に支障が生じるおそれもあります
    強制執行がなされる前に、債務整理によって事態の改善を図りましょう。

3、遅延損害金を免除してもらう方法は?

遅延損害金の支払いが困難な場合は、債務整理を行えば遅延損害金を免除してもらえる可能性があります。
遅延損害金の免除を受けるための具体的な方法は、以下のとおりです。

  • 任意整理を行う
  • 個人再生を申し立てる
  • 自己破産を申し立てる


  1. (1)任意整理を行う

    任意整理は、債権者との協議によって、利息・遅延損害金のカットや返済スケジュールの変更などを認めてもらう手続きです。
    利息制限法の上限を超える金利を支払っていた場合には、あわせて過払い金の返還も請求できます。

    裁判所を通さずに行うため、迅速かつ柔軟に債務負担を軽減できる可能性があるのが特徴です。
    また、任意整理の対象とする債務は債務者が選択できるので、保証人のついた債務がある場合には、その債務以外を対象とすることで、保証人に迷惑をかけないように手続きを進めることもできます。

    ただし、元本のカットは認められないケースが多いため、他の債務整理手続きに比べると、債務負担の軽減効果が小さいというデメリットがあります

  2. (2)個人再生を申し立てる

    個人再生は、債権者の決議・裁判所の認可を経た再生計画に基づき、債務のカットや返済スケジュールの変更を行う手続きです。

    個人再生では元本のカットが認められるため、任意整理よりも大幅に債務負担を軽減できる可能性があります。
    住宅ローンを減額の対象外として、自宅の土地・建物の処分を回避できる制度も設けられています。

    ただし、個人再生は原則として全債権者を対象とするため、保証人がいる場合には迷惑がかかることを避けられません
    また、個人再生を利用するためには、安定した収入があることが条件となります。

  3. (3)自己破産を申し立てる

    自己破産は、債務者財産を換価・処分して債権者へ配当する手続きです。清算後、残った債務の免除をしてもらうことで、借金から解放されることを目指します。

    租税など一部の債務を除いて債務免除が認められる点が、自己破産の特徴です。
    債務負担に苦しむ方にとって最後のセーフティーネットの機能を果たしています。

    ただし、自己破産をした場合には、債務者財産が原則として処分されてしまいます
    また、一部の職業(士業・警備員など)について資格制限が発生する点についても注意してください。

4、借金問題を弁護士に相談すべき理由

借金の返済が困難になったら、弁護士にご相談ください。
弁護士に相談することには、以下のようなメリットがあります。

  • 適切な債務整理の方法がわかる
  • 貸金業者からの取り立てがストップする
  • 債権者との交渉や法的手続きの対応を一任できる


  1. (1)適切な債務整理の方法がわかる

    任意整理・個人再生・自己破産の各手続きには、それぞれ異なるメリット・デメリットがあるため、債務者の状況に合わせて適切な手続きを選択することが重要です。

    弁護士は、相談者の状況を丁寧にヒアリングしたうえで、総合的な観点から最適な債務整理の方法を提案することができます

  2. (2)貸金業者からの取り立てがストップする

    弁護士は債務整理の依頼を受けたら、各債権者に対して受任通知を発送します。

    消費者金融などの貸金業者は、弁護士から債務整理についての受任通知を受領した場合、それ以降は正当な理由なく、債務者に対して直接取り立てを行うことが禁止されます(貸金業法第21条第1項第9号)。
    貸金業者からの厳しい取り立てに困っている場合は、弁護士に依頼しましょう

  3. (3)債権者との交渉や法的手続きの対応を一任できる

    任意整理に関する債権者との交渉や、個人再生・自己破産の申し立てなどについては、すべて弁護士に任せることができます。

    借金に関する対応を弁護士に代行させることで、自身の生活の立て直しなどに注力することができるでしょう

5、まとめ

債務を期限どおりに支払わないと、遅延損害金の支払い義務が発生します。

返済をしなければ、最終的には強制執行によって財産を失ってしまうおそれがあります。
事態が深刻化する前に、弁護士に相談したうえで、債務整理を行いましょう。

ベリーベスト法律事務所は、債務整理に関するご相談を随時受け付けております。
借金の返済に苦しんでいる方は、お早めに、ベリーベスト法律事務所へご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています