防犯カメラの映像で逮捕される? 弁護士に相談するメリットを紹介
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近年、防犯カメラが急速に普及しており、民間で設置された防犯カメラの総数は、全国で数百万台にものぼるともいわれています。神奈川県警でも、防犯コンシェルジュという制度を設けて、防犯カメラの設置を推進しています。
窃盗や痴漢など、罪を犯した自覚がある場合、防犯カメラの映像で犯罪がばれて逮捕されるのではないかと不安になるかもしれません。罪を犯したことに間違いがなければ、相応の刑事責任を負うのはやむを得ないと考えるべきでしょう。
しかし、逮捕や重い刑事責任を課せられるリスクを少しでも減らすためにできることはあります。本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスの弁護士が、防犯カメラの映像により犯罪がばれて逮捕される可能性や、犯罪行為をしてしまった場合の対処法について解説します。
1、防犯カメラの映像で犯人が特定される?
防犯カメラが犯罪捜査でどのように使われているのかについて解説します。
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(1)防犯カメラの映像は犯人特定の大きな手掛かりになる
被害届の提出などにより警察の捜査が開始されると、まず犯人の候補となる被疑者(容疑者)の割り出しが行われます。
具体的には、被害者の説明や目撃情報、現場付近の防犯カメラの映像などにより、被疑者の特定を進めるのが一般的です。
防犯カメラの映像は必ずしも鮮明なものばかりではありませんが、画像の鮮明化や個人識別の技術も飛躍的に進化しています。複数のカメラの映像から容姿や行動経路が解明されて、被疑者特定に至るケースも少なくありません。 -
(2)防犯カメラの映像により犯人が検挙された事例
冒頭でも紹介したとおり、神奈川県内でも防犯カメラが普及しており、その映像が犯罪捜査に活用されています。
2022年5月には、横浜市内の男が女性宅に押し入って強盗などをした事件で、約50台分の映像をリレー方式でたどって犯人の住居を特定したことが一般紙で報じられました。
神奈川県警のホームページでも、雑居ビルやマンション、店舗などの防犯カメラ映像により犯人検挙に至った事例が紹介されています。
また、防犯カメラだけでなく、スマートフォンやドライブレコーダーで撮影された映像も捜査に活用されるケースがあります。昨今では、生活のあらゆる場面で撮影されている可能性があると考えたほうがいいかもしれません。
2、防犯カメラの映像のみで逮捕される可能性は?
防犯カメラに映っていると、それだけで逮捕されてしまうことがあるのかについて解説します。
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(1)刑事事件の証拠の考え方
防犯カメラの映像が犯罪捜査でどのように扱われるのか理解するために、刑事事件における証拠の考え方について、具体例を交えて簡単に解説します。
刑事事件の証拠は、犯罪事実を直接証明する「直接証拠」と、犯罪事実を推認させる「間接証拠」に区別されます。・直接証拠とは
犯罪事実そのものを証明する証拠です。たとえば、被疑者本人の自白や、目撃者の証言、犯行状況が映っている映像などがこれにあたります。
・間接証拠とは
犯罪事実を推認させる証拠です。たとえば、犯行現場で採取された被疑者の指紋やDNA資料、被疑者が経済的に困っていたなどの周囲の供述、窃盗において盗品と思われる物を売却した履歴などがこれにあたります。
どのような証拠がそろえば逮捕されるのかについて、法律では、「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」がある場合と規定されています。
この基準は、ケース・バイ・ケースで判断されますが、一般的には、直接証拠がひとつでもあれば、容疑が濃厚となり、逮捕される可能性が高いといえるでしょう。自白などの直接証拠がない場合でも、複数の間接証拠を積み上げて逮捕されるケースもあります。 -
(2)防犯カメラは逮捕の証拠になる?
防犯カメラの映像は、映っている内容によって、証拠としての価値が異なります。被疑者による犯行の場面が映っている場合は、決定的な直接証拠となるのはいうまでもありません。
犯行と近接した時間や場所において被疑者が凶器や盗品を所持している映像や、犯行場面の目撃証言と一致する被疑者の容姿、特徴の映像も、犯人であることを推認させる有力な間接証拠になると考えられます。
一方で、被疑者が現場付近を通行中の映像の場合、犯行現場付近にいたというだけで犯罪を行ったとは限らないので、その映像だけで逮捕されることは考えにくいでしょう。もっとも、防犯カメラの映像が犯罪を証明する証拠にならないとしても、犯人特定の資料となって捜査の対象になり、逮捕につながる可能性はあります。 -
(3)捜査の対象になるとどうなる?
防犯カメラの映像により被疑者が捜査の対象になると、警察は直接証拠や間接証拠を収集する捜査を行います。
犯罪捜査は、証拠隠滅や逃亡を防ぐため、原則として密行性が重視されます。そのため、捜査の対象になっていることに気づかないうちに捜査が進展し、突然逮捕されたり、家宅捜索を受けたりするケースも珍しくありません。
また、ある程度証拠が集まった段階で警察に呼び出されて取り調べを受け、そのまま逮捕されたり、後日逮捕されたりするパターンもあります。
3、逮捕のタイミング|逮捕を免れることはできる?
罪を犯して防犯カメラに映った可能性がある場合、いつ捜査が開始されて、いつ逮捕されるのか不安に感じられることもあるでしょう。
逮捕されるタイミングや、逮捕を免れる方法があるのかについて解説します。
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(1)防犯カメラ映像の保存期間は1週間~1か月
防犯カメラの映像は、常時撮影をしながら古い映像に上書きして記録される方式が一般的なので、映像が保存される期間は、1週間から1か月程度が大半です。
警察は、犯人特定のために必要があれば、現場付近の防犯カメラの映像を収集します。
しかし、映像が残っている期間はそれほど長くないので、防犯カメラの映像が確保できるかどうかは、捜査が開始されるタイミングにも左右されます。
防犯カメラの映像が残っていなかったとしても、別の方法で犯人の割り出しや証拠の収集が進められることになります。 -
(2)逮捕のタイミングは捜査の進捗による
警察の捜査は、事件が発生した順番に行われるわけではなく、事件の重大性や証拠隠滅、逃亡のおそれなどの要素を踏まえて優先順位がつけられます。
そのため、本格的な捜査が行われるのは、数週間から数か月後、あるいは事件から半年以上経過することもあり、かなり時間がたってから逮捕されたり、警察に呼び出されたりするケースも珍しくありません。
なお、事件発生から捜査をして刑事裁判として公訴を提起するまでの期間について、公訴時効という規定が設けられています。
公訴時効の期間は、犯罪の法定刑の重さによって定められていますが、主な罪の時効期間は次のとおりです。- 3年:侮辱、名誉毀損、暴行、脅迫、性的姿態等撮影、痴漢(神奈川県迷惑行為防止条例違反)
- 5年:横領、過失運転致傷(無免許運転による場合は7年)
- 7年:窃盗、詐欺、恐喝、業務上横領
- 10年:傷害、強盗、過失運転致死
- 12年:不同意わいせつ
- 15年:強盗致傷、不同意性交等
- 20年:傷害致死、不同意わいせつ等致傷
- 25年:殺人未遂、現住建造物等放火
- 30年:不同意わいせつ等致死
- 時効なし:殺人(既遂)、強盗致死
法律上は、罪を犯してから時効が成立するまで、捜査が行われて逮捕される可能性があるということになります。
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(3)逮捕を免れるためにできることはある?
ここまで、罪を犯して防犯カメラの映像などで捜査の対象となり、証拠が固まれば逮捕されるという流れで解説してきましたが、罪を犯しても必ず逮捕されるというわけではありません。
逮捕が認められるためには、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることに加えて、逮捕の必要性があることも要件とされます。
逮捕の必要性とは、逮捕して身柄を拘束しなければ、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるという意味で、主に次の要素から判断されます。- 職業や家族関係、年齢など身元の安定性
- 犯した罪の性質や重大さ
- 証拠の隠蔽(いんぺい)、改ざんや被害者、目撃者への働き掛けの可能性
罪を犯した場合、逮捕される可能性を減らすためには、できるだけ早く逮捕の必要性を低減させる有効な手段を講じることが重要です。具体的な方法は次章で解説します。
4、罪を犯した場合は早期の弁護活動が重要
犯罪行為をしてしまった場合は、逮捕される前の段階での弁護士による弁護活動が重要です。早期に弁護士に弁護を依頼するメリットを解説します。
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(1)自首することで処分が軽くなる可能性がある
罪を犯した場合、逮捕される前に警察に出頭して犯罪を申告することが最善の方法と考えられます。
警察に出頭するかどうか迷ったときは、まずは弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、法律の専門家として、警察に出頭するメリットやデメリット、今後の手続の流れや処分の見通しについて、客観的なアドバイスをすることができます。
なお、法律上の「自首」とは、捜査機関に犯罪が発覚する前、または犯人が特定される前に捜査機関に犯人として名乗り出て、犯罪を申告することをいいます。自首が成立すると、刑の減軽を受けられる可能性がありますが、自首が成立しない場合でも、自発的に犯罪を申告することは、有利な事情として考慮されて処分が軽くなることが期待できます。
犯した罪の内容や重さにもよりますが、自発的に犯罪を申告したことが評価されて、次のような軽い処分になった例もあります。- 逮捕の必要性がないと判断されて、在宅のまま捜査が続けられる
- 不起訴処分となって刑事裁判や処罰を免れる
- 起訴されても罰金刑や執行猶予などより軽い刑になる
警察に犯罪を申告することは重い判断になりますが、以下の再発防止策や監督態勢の整備、示談交渉などの弁護活動を合わせて行うことで、より高い効果が期待できます。
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(2)再犯防止策や監督態勢を整えられる
再犯の可能性や家族などの監督態勢の有無は、逮捕の必要性や刑事処分の判断において重要な要素です。
適切な再犯防止策を講じて、家族などが本人の生活を監督する態勢を整えれば、有利な事情となります。
これらの環境整備は、客観的かつ法律家としての目線で行わなければ、捜査機関や裁判所の理解を得ることは難しい面があります。そのため、弁護士のサポートを受けながら早急に進めることをおすすめします。 -
(3)被害者との示談交渉を依頼できる
被害者がいる事件では、被害者に対する謝罪や被害弁償、示談を早期に行うことが重要です。
しかし、加害者本人が不用意に被害者に接触すると、証拠隠滅や証人威迫と誤解される可能性があるので、慎重に行う必要があります。
弁護士は、刑事事件の示談交渉をまとめた経験が豊富なので、被害者の心情に配慮しながら適正な条件を提示して示談交渉を行うことが可能です。
5、まとめ
防犯カメラに映っただけで逮捕されることはあまり考えられませんが、映像により捜査の対象として特定されれば、いずれ逮捕される可能性もあるでしょう。
警察の犯罪捜査は、外部からは分からないように進められるのが一般的なので、ある日突然逮捕されることもあります。罪を犯した自覚がある場合は、自首について弁護士に相談するとともに、逮捕や重い刑事処分を避けるための弁護を依頼することをおすすめします。
特に被害者との示談交渉は慎重に進める必要があるので、弁護士を介して行うのが賢明です。ベリーベスト法律事務所には、逮捕前の弁護活動に豊富な経験と実績を持つ弁護士が在籍しています。
逮捕や刑事手続に不安を感じている方は、ぜひベリーベスト法律事務所 小田原オフィスにご相談ください。
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