ゲートウェイドラッグの所持や使用は違法? 刑罰や逮捕後の流れを解説

2021年11月18日
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ゲートウェイドラッグの所持や使用は違法? 刑罰や逮捕後の流れを解説

違法な薬物は、意外にも身近なところで取引されています。令和元年7月には、小田原市内の工場を借りて大麻草を栽培した男3人が、神奈川県警薬物銃器対策課などに逮捕されたと報道されました。この事件では、小田原市・平塚市・茅ヶ崎市の拠点から合計234本、末端価格にして2340万円相当の大麻草が押収されています。

違法薬物は、使用すれば身体に重大な悪影響を及ぼす危険があります。しかし、実際には繁華街やクラブなどで「違法ではない」「法律で許可されている国もある」などという触れ込みで、隠語を用いて流通しており、社会問題にもなっています。これらの薬物は「ゲートウェイドラッグ」とも呼ばれており、一度でも使用してしまえば離脱は容易ではなく、逮捕・刑罰を繰り返して受けるケースも少なくないのです。

本コラムでは「ゲートウェイドラッグ」の所持・使用・販売で問われる罪や刑罰、逮捕された場合の流れなどを小田原オフィスの弁護士が解説します。

1、「ゲートウェイドラッグ」とは

「ゲートウェイドラッグ」という用語は、ある特定の薬物を指すものではありません。まずは、ゲートウェイドラッグがどのような薬物なのかを確認していきましょう。

  1. (1)ゲートウェイドラッグの意味

    ゲートウェイドラッグとは、覚醒剤(覚せい剤)などのように強い依存性や副作用のある、危険性が極めて高い薬物の使用につながるおそれのある薬物を指す用語です。
    「ゲートウェイ(Gateway)」とは日本語に直訳すると「出入り口」や「玄関・門」といった意味をもっており、薬物の乱用につながる入口になるとして危険視されています。

    薬物犯罪は、使用を繰り返すことで次第にエスカレートしていく傾向があります。ゲートウェイドラッグを使用している段階で抑止できれば、薬物の乱用防止につながると考えられているため、政府や警察はゲートウェイドラッグの取り締まりを強化しています。

  2. (2)ゲートウェイドラッグの種類

    現在、ゲートウェイドラッグと呼ばれているのは「大麻」や「違法(脱法)ドラッグ」が中心です。違法ドラッグは、脱法ドラッグ・危険ドラッグ・合法ドラッグ・脱法ハーブといった呼び方を用いられることがありますが、すべて同じものだと考えられます。

    日本では、古くはシンナーなどの有機溶剤がゲートウェイドラッグとして危険視されていた時代もありますが、現在では大麻がそれらの代用とされているともいわれています。また、未成年者が好奇心などから違法薬物を使用してしまう契機になるとして、アルコールやタバコもゲートウェイドラッグのひとつだと指摘する意見もあるようです。

2、ゲートウェイドラッグの所持や使用で問われる罪

ゲートウェイドラッグである大麻・違法ドラッグは、法律による厳格な規制を受けています。ゲートウェイドラッグの所持や使用で問われる可能性がある罪を確認しておきましょう。

  1. (1)大麻取締法違反

    大麻は、大麻取締法の規制を受ける薬物です。

    大麻取締法では、都道府県知事の免許を受けて大麻を取り扱う大麻栽培者・大麻研究者を「大麻取扱者」とし、同法第3条1項において大麻取扱者以外の者が大麻を所持することを禁止しています。
    また、大麻取扱者であっても、所持の目的外で使用してはいけないという規制があります。

    大麻取扱者以外の者が禁止されている行為は、所持・栽培・譲り受け・譲り渡し・研究のための使用の5つです。これらの行為があった場合は同法第24条の2第1項の違反となり、5年以下の懲役が科せられます。

    大麻取締法によって禁止されている行為について注目すべきは、「使用が禁止されていない」という点です。
    大麻はタバコのように紙に巻いたりパイプを使ったりして成分を吸引しますが、決して人体への有害性が少ないという理由で使用が禁止されていないわけではありません。
    使用が禁止されていない理由は、有害性が極めて低いとして規制対象になっていない成熟した茎や種子からも大麻成分が検出されるため、違法な大麻を使用したことを特定することが難しいためです。

    使用が禁止されていないといっても、使用するには所持・栽培・譲り受けが前提となるため、厳しい追及を受ける事態は避けられません
    令和3年1月には厚生労働省が使用の禁止を含めた法改正を検討しているとも報道されているため、使用は合法だと考えるべきではないでしょう。

  2. (2)医薬品医療機器等法違反

    違法ドラッグは、「医薬品医療機器等法」の規制を受ける薬物です。医薬品医療機器等法は、正確には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。

    同法第76条の4において禁止されているのは、指定薬物を製造・輸入・販売・授与・所持・購入・譲り受け・医療用途外で使用する行為です。

    ここでいう「指定薬物」とは、幻覚や興奮させる可能性が高く、人体に悪影響を与えるおそれのある物質を厚生労働省が薬事法に基づき指定しているもので、1300物質以上が指定されています。

    これらの行為があった場合は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。

3、ゲートウェイドラッグを売った場合は罪が重くなる

薬物犯罪では、違法な薬物のまん延を防ぐために販売行為には厳しい罰則が設けられています。ゲートウェイドラッグを売った場合の刑罰を確認しておきましょう。

  1. (1)大麻取締法違反にあたる場合

    大麻取締法第24条の2第2項は、大麻取扱者以外が「営利の目的」で所持・栽培・譲り受け・譲り渡し・研究のために使用した場合、7年以下の懲役、または情状により7年以下の懲役および200万円の罰金に処すると定めています。

    大麻を販売する行為は営利目的の譲り渡しにあたるため、単純な所持などと比べると厳しい刑罰を受ける事態は避けられません。
    なお、ここでいう「情状により」とは、裁判官が有罪判決を下す際に量刑を判断するために考慮する事情を指し、裁判官の判断によっては、懲役に加えて罰金も併科されるおそれがあります。

  2. (2)医薬品医療機器等法違反にあたる場合

    医薬品医療機器等法第76条の4では販売行為も禁止しているため、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの両方が併科されます。

    さらに、同法第83条の9では、販売を含めた禁止行為が「業として」と判断された場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下罰金、またはこれらが併科されると規定されています。

    「業として」とは、営利の目的で反復継続的におこなわれる行為です。たとえば、SNSを通じて不特定多数に脱法ドラッグを販売している、クラブなどで売人として客に販売しているといった状況があれば一段と厳しい刑罰が下されると考えておきましょう。

4、違法薬物の所持などで逮捕された場合の流れ

大麻や脱法ドラッグといった、ゲートウェイドラッグの所持・使用・販売などの容疑で逮捕されると、法律が定める刑事手続きを受けることになります。

  1. (1)逮捕・勾留によって身柄を拘束される

    警察に逮捕されると、警察署の留置場に身柄を置かれたうえで警察官による取り調べがおこなわれます。ゲートウェイドラッグを所持していた経緯や販売先、入手経路などについて詳しく聴取されることになるでしょう。

    警察での身柄拘束の期間は48時間以内です。
    48時間が経過するまでに、留置の必要がないと判断され釈放されない限り、逮捕された被疑者の身柄は検察官へと送致されます。

    送致を受けた検察官は、さらに自らも被疑者を取り調べたうえで、24時間以内に裁判官に勾留を請求するか、被疑者を釈放するかを判断します。

    裁判官が勾留を認めると、10日間以内を上限に身柄拘束が延長されます。
    被疑者の身柄は警察へと戻されて、検察官による指揮のもとで取り調べが続きます。初回の勾留で捜査が遂げられない場合は、延長請求によってさらに10日間以内の身柄拘束が可能です。

    逮捕による身柄拘束は、警察段階で48時間、検察官の段階で24時間の合計72時間となり、さらに勾留によって10日間、延長されるとさらに10日間の合計20日間にわたり、身柄拘束が認められています。
    つまり、逮捕・勾留されると、最長で23日間にわたる身柄拘束を受けるおそれがあります。

  2. (2)起訴されると刑事裁判が開かれる

    勾留期限が満期を迎えるまでに、検察官は起訴・不起訴を判断します。

    検察官が起訴に踏み切った場合は、被告人として刑事裁判を待つ身となります。保釈が認められない限りは勾留が続き、期日に刑事裁判の場で審理されることになります。
    刑事裁判の最終回では有罪・無罪の判決が下され、有罪の場合は法定刑の範囲内で量刑が言い渡されます。

    一方で、検察官が不起訴とした場合、刑事裁判は開かれません。刑事裁判が開かれないので、当然、刑罰を受けることも前科がつくこともありません。

    そのため、厳しい刑罰を回避するためには、検察官の不起訴を目指すのが最善策です。
    二度とゲートウェイドラッグに手を出さないという更生の意思を示すほか、薬物からの更生を支援する団体への贖罪寄付(しょくざいきふ)などによって深い反省を示せば、検察官が不起訴とする可能性があります。

    検察官が起訴に踏み切った場合でも、家族が監督し更生を支援する体制が整っている、薬物を乱用する仲間との関係を断ち切るなどの有利な事情があれば、量刑の軽減や執行猶予つきの判決も期待できるでしょう。

    不起訴や量刑の軽減・執行猶予つきの判決といった有利な処分を得るためには、反省の意思や再犯防止対策を講じることを具体的に示す証拠をそろえるほか、捜査機関への働きかけも欠かせません。
    これらの対応は、薬物事件の知識や経験が求められるので、弁護士に相談してサポートを依頼することをおすすめします。

5、まとめ

ゲートウェイドラッグは、覚醒剤などの危険性が高い違法薬物の乱用へとつながるおそれのある薬物で、大麻取締法や医薬品医療機器等法などの規制を受けます。
所持・使用・販売などの行為が発覚すれば、逮捕・勾留による長期の身柄拘束や厳しい刑罰を受ける危険があり、会社や学校から不利益な処分を受けるおそれもあるため、迅速な対応が必要です。

ゲートウェイドラッグをはじめとした薬物事件の容疑をかけられてしまい、逮捕や刑罰に不安を抱えている方は、ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスにご相談ください。
薬物事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、不起訴や量刑の軽減・執行猶予といった有利な処分を目指して全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています