レンタカーの運転中に追突された! 事故後の対応や保険について解説
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神奈川県警のデータによると、同県内で2021年中に発生した交通事故は2万1660件で、前年比1030件の増加となりました。2021年中の同県内における交通事故による死者数は142人で、前年比2人の増加となっています。
レンタカーで交通事故に遭った場合、ご自身がケガをするだけでなく、借りたレンタカーも破損してしまうこともなるでしょう。レンタカー保険の適用を受けるほか、状況によっては相手方に対する損害賠償請求を行って、損失の回復に努める必要があります。
本コラムでは、レンタカーの運転中に交通事故に遭った場合の対処法やレンタカー保険の内容、加害者に対する損害賠償請求などについて、ベリーベスト法律事務所 小田原オフィスの弁護士が解説します。
1、レンタカーで交通事故に遭った場合、とるべき対応
まず、レンタカーの運転中に交通事故に遭ってしまった場合に取るべき対応を解説します。
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(1)けが人の救護
交通事故が発生した場合、当事者である車両の運転者には、事故による負傷者の救護義務が課されています(道路交通法第72条第1項前段)。
したがって、事故の相手方が負傷している場合には、安全な場所に移動したうえで応急処置を行ったり救急車を呼んだりするなどの対応をする必要があるのです。
運転者に課された救護義務に違反した場合、「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処される可能性があります(同法第117条第1項)。
また、相手方の死傷がご自身の運転に起因する場合には、救護を怠ると「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に処される可能性があるのです(同条第2項)。
もし事故を起こしたり相手を負傷させたりしてしまっても、決して事故現場から逃走せず、落ち着いて救護するように努めましょう。 -
(2)警察への事故報告
交通事故の発生時には、当事者である車両の運転者は、警察官に対して以下の事項を報告しなければなりません(道路交通法第72条第1項後段)。
- 交通事故の発生日時
- 交通事故の場所
- 死傷者の数
- 負傷者の負傷の程度
- 損壊した物および損壊の程度
- 交通事故に係る車両等の積載物
- 交通事故について講じた措置
近くに警察官がいる場合にはその警察官へ、いない場合には最寄りの警察署や交番の警察官へ、速やかに報告を行いましょう。
報告義務を怠った場合、「3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金」に処される可能性があります(同法第119条第1項第10号)。 -
(3)レンタカー会社への連絡
レンタカーの運転中に事故を起こした場合には、レンタカー会社にも連絡する必要があります。
レンタカーの利用規約により、交通事故の発生時における報告が義務付けられている場合が多いです。
また、速やかにレンタカー会社へ報告しなかった場合、レンタカー保険の適用を受けられなくなるおそれがあります。
レンタカー会社への報告も失念しないようにしましょう。 -
(4)自分が加入している保険会社への連絡
レンタカーの補償が受けられない場合でも、一般に「他車運転特約」と呼ばれる特約がついていれば、自分の任意保険を使って賠償金を支払うことが可能です。
万が一の事態に備えて、レンタカーを借りる前に自分の任意保険に他車運転特約が存在するのか確認しておきましょう。
他車運転特約を使う場合には保険会社に連絡をしましょう。 -
(5)通院
交通事故に遭った場合、必ず医療機関を受診してください。
明らかにケガをしている場合はもちろん、一見してケガがないようでも、見えない部分でケガが発生しているおそれがあるためです。
治療の開始が遅れた場合、ケガが完治せずに後遺症が残ってしまうリスクが高まります。
外傷や痛みの有無にかかわらず、速やかに医療機関へ足を運びましょう。
2、レンタカーに適用される保険の内容
以下では、レンタカー会社が付保する保険について解説します。
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(1)レンタカー保険の基本的な補償内容
レンタカー保険による補償には、基本的に、以下のような内容が含まれています。
- ① 対人補償
交通事故の相手方が死傷した場合に、相手方に対する損害賠償が保険から支払われます。 - ② 対物補償
交通事故によって相手方の車両などが壊れた場合に、相手方に対する損害賠償が保険から支払われます。
補償額は無制限が一般的ですが、5万円前後の免責額が設定されることが多いです。 - ③ 車両補償
交通事故によってレンタカーが壊れた場合に、修理費用などが保険から支払われます。
補償額は車両時価額を上限とするのが一般的ですが、5万円~10万円程度の免責額が設定されることも多いです。 - ④ 人身傷害補償
交通事故によってレンタカーの運転者が死傷した場合に、ケガ・後遺症・死亡に関する損害補償が保険から支払われます。
1名につき3000万円程度を上限とするケースが一般的です。
- ① 対人補償
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(2)補償対象外となる交通事故がある
レンタカーの運転者に重大な過失がある場合などには、レンタカー保険の適用を受けられない可能性がある点に注意してください。
一般的には、以下に挙げるようなケースがレンタカー保険の適用対象外とされています。
- 警察に対する交通事故の報告を行わなかった場合(交通事故証明書がない場合)
- レンタカー会社に対する交通事故の連絡がなかった場合
- レンタカー会社に伝えていない人が運転している最中に起こった交通事故
- 無免許運転
- 酒気帯び運転
- 無断延滞中の交通事故
- 利用規約違反があった場合
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(3)免責金額に要注意|CDWを利用すれば全額免責
レンタカー保険の対物補償・車両補償については、「免責額」が設定されているのが一般的です。
免責額とは「保険会社が免責される額」、つまり保険金が支払われない損害額を意味します。
たとえば、車両補償について5万円の免責額が設定されており、レンタカーの修理費が50万円かかったとします。
この場合、45万円は保険から支払われる一方で、5万円はレンタカー利用者の自己負担となってしまうのです。
なお、「車両・対物事故免責額補償制度(Collision Damage Waiver、CDW)」を利用すると、免責額の支払いが免除されます。
CDWは1日当たり1000円から2000円程度で利用できるので、交通事故が心配な方は利用を検討するとよいでしょう。 -
(4)NOCが発生する場合あり|追加料金で免責可能
レンタカーの運転中に交通事故を起こした場合、レンタカー会社に対する「ノン・オペレーション・チャージ(Non-operation Charge、NOC)」の支払いも発生します。
NOCとは、車両の修理や清掃などが必要となった場合に発生する、営業に使用できなくなった期間に応じた補償金(賠償金)です。
返却すべき営業所へ返却された場合は2万円程度、それ以外の場合には5万円程度のNOCが課されることになります。
なお、NOCについても対物補償・車両補償の免責額と同様に、追加料金を支払うことで免除される場合があります。
レンタカーを利用する前に、レンタカー会社に確認しておくとよいでしょう。
3、交通事故について、加害者に請求できる損害賠償の項目
レンタカー保険には人身傷害保険がセットになっており、3000万円程度までは、運転者に生じた損害も補償されるのが一般的です。
しかし、運転者が死亡した場合、後遺症が残った場合、介護が必要となった場合などには、人身傷害保険の限度額を上回る損害が発生することもあり得ます。
このような場合には、事故の加害者に対して損害賠償を請求しましょう。
以下では、加害者に対して請求できる損害賠償について、具体的な項目を解説します。
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(1)積極損害
「積極損害」とは、交通事故によって被害者が実際に支出した費用を意味します。
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<積極損害の例>
- 治療費
- 通院交通費
- 装具、器具購入費
- 入院雑費
- 介護費用
- 葬儀費用
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(2)消極損害
「消極損害」とは、本来は被害者が得られたはずなのに、交通事故によって失われた利益のことです。
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<消極損害の例>
- 休業損害
- 後遺障害逸失利益
- 死亡逸失利益
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(3)慰謝料
「慰謝料」とは、交通事故によって被害者が被った精神的損害に対する賠償金のことです。
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<慰謝料の例>
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
4、レンタカーで交通事故に遭った場合は弁護士にご相談を
レンタカー保険の人身傷害保険の限度額を上回る損害が発生して、加害者に対する損害賠償を請求する必要がある場合には、弁護士にご連絡ください。
弁護士は、レンタカー会社とのやり取りや加害者側との示談交渉などを、全面的に代行することができます。
また、交通事故に関して弁護士に対応を依頼する場合については、自動車保険の「弁護士費用特約」を利用することができます。
一般的には、300万円程度までの弁護士費用が、弁護士特約から補償されます。
ぜひ、ご自身の加入している保険の補償内容を確認してみてください。
5、まとめ
レンタカーの運転中に交通事故に遭った場合には、まずは事故が発生したという事実を警察やレンタカー会社等に報告してください。
また、後遺症の発生を防ぐために、ケガの自覚症状がない場合にも、できるだけ早めに医療機関で診断を受ける必要があります。
ご自身のケガなどに関する補償の多くは、レンタカー保険によってカバーされます。
利用開始時に案内されたレンタカー保険の内容を確認して、漏れなく補償の請求を行いましょう。
そして、レンタカー保険ではカバーされない損害が発生した場合には、相手方に対する損害賠償を請求することになります。
十分な金額の損害賠償を受けるために、示談交渉は弁護士に依頼しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、交通事故に関する法律相談を随時受け付けております。
レンタカー運転中に交通事故が発生したら、まずは、ベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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